基軸

私を無視している時、私は彼に恋をする。追いかけたい性分だし、そういう恋愛しかしてこなかったから、追いかけられることが正直慣れていない。

仕事に向かう姿勢が好きだった。スーツをビシッと着ている姿や、私を忘れてしまうほどに没頭しているその姿が、サラッとなんでもこなしてしまいそうな声色が。

憧れていたのはすでに3年も前になる。あの頃は会えるだけで私の鼓動は早くなった。意味もなく早くなった。言葉を交わせないほどに呼吸が乱れてしまう。

今も彼の姿を見ると意地悪をしたくなる。

ツンデレというような可愛らしい言葉ではおさまらない。

子供のわがままだ。


彼を思うと、ずっと抱いていてあげたくなるのに、それなのに、現実では甘えてしまう。頼り甲斐のないあの細い腕を信頼している証拠だ。


浮気性だとか気が多いとか、惚れっぽいとか色々言われるものの、彼はずっと私といてくれる。私もどんなに喧嘩をしてもいて欲しいと願って祈っている。

私たちの夜は簡単に想像できた。声を聞いた時に焦ったほどに私は恋をした。

たぶん。


一瞬で見分けてしまうのは嗅覚だと思う。視力には自信がないから。

放つオーラの香りは私の五感を自分に注目させる。運命だろう、そういうものでなければ説明がつかない。

ツインレイとかいう洒落た言い方もまたいいと思う。

昨日の月はお手本のように惚れ惚れする美しさだった。

完璧な金色、ちょっと不恰好な円形、放つ光は穏やかで遠慮深い。

私の理想とする月だった。

見上げてたまたまラッキーだった。彼との出会いもその程度のことなのに、私は変に運命を自分に言い聞かせていた節がある。きっと好きで好きでたまらなくて他と差をつけたかったのだろう。

嫉妬はしないと言いつつ彼を手放せない独占欲を体のいい言葉で化粧している。

あの人のすべてを私は見ていたい。一滴だって誰にも見せたくない。

狂気であり、病気であり、いかれた関係そのものだ。

父が亡くなって同等になれたことを心の奥底で喜んだ。なんでもお揃いがよかった、なんでも同じがよかった。

親不孝だと言われても私は彼を愛している。



I don't want to give it anyone ever never. You are mine since we were born.

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